Linked Horizon「紅蓮の弓矢」BメロのAvoidについて
これはKCS AdventCalendar2021 5日目の記事です。
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こんにちは、Rinjuです。
一昨日に続いて、今回はメロディの話をします。
昨夜、【番組名】でオーイシマサヨシさんがLinked Horizonの紅蓮の弓矢を歌ってらっしゃいました。
鋭い方はお気づきになったかもしれませんが、Bメロのメロディが本家のCD音源とは明確に違っていたことと思います。
Roseliaが紅蓮の弓矢をカバーした際も同様のメロディで歌ってらっしゃいましたし、なんなら本家本元のLinked Horizonでさえ近年のライブではこちらのメロディを歌っています。
下の動画で、2種のメロディを比較しているのでご確認ください。
いかがでしょうか? 赤で示した2つの音符が違っている箇所です。ここでより重大なのは初めの方であり、2番目の方はおまけのような変化だと思っています。そこで、以降は基本的に初めの方の赤い音符「家畜の安寧」の「あん」の部分(音符Aと呼びます)に注目することにします。
この音符がある箇所のコードはC♯mであり、スケールはC♯エオリアンです。スケールをよく知らない方は、ここでは一般的に言われるところのC♯ナチュラルマイナーと考えて差し支えありません。白鍵をA音(ラ)から順に上向きに引いたときにできるスケールをC♯音から始まる形に移調したものと考えてください。
コードC♯mにおけるC♯エオリアンのAvoid(避けた方が良い音、あるいは要注意音)はA音です。音符AはA音と一致しています。
さて、Avoidの使い方として紅蓮の弓矢CD音源のような使い方は一般的ではないと思います。経過音やリゾルブする音(スケールの隣の音に解決する音)であればともかく、音符Aは前後の音と飛び飛びで用いられています。
この良し悪しは聴いた印象で判断するところだと思います。CD音源を聴くと違和感はなくむしろかっこいいです。ところが、ピアノで弾いてみると音符Aの部分だけ濁ってしまいます。音符Aは普通は鳴らすべきではない、Avoidと呼ばれる通りの音のようです。
音符Aは半音下げてG♯音に変えるとAvoidではなくなります(変更A。変更後の音を音符A’とします)。この変更は色々なところで採用されており、僕の手元にある紅蓮の弓矢のバンドスコア(有限会社KMP発行)では音符Aのみに変更Aが施されています(2番目の赤い音符は変更なし)。Roseliaのカバーや昨日のオーイシマサヨシさんの歌唱では両方に変更Aが適用されています。Linked Horizonのライブの場合、2013年の紅白歌合戦時点では一切変更がありませんでしたが、2017年の「進撃の軌跡」ライブツアーではRoseliaなどと同様、あるいは2つ目の音のみCD音源の通りでした。2番目の赤い音符はどちらにしてもAvoidにはならないので、変えないこともあるし、変更Aのついでと言ってはなんですが変えてしまうこともあるようです。
この記事をご覧になっているあなたは音符Aと音符A’、どちらが良いと感じたでしょうか? 僕はCD音源そのままが最高だと思っています。音符A’はもったりしていて曲のイメージと合いません。音符Aの方が立体機動装置で街を駆け流ような疾走感があります。また、2番目の赤い音符はコードのルートと一致し、強い感じになっています。ここを半音下げてメジャーセブンスの位置に置いてしまうと、ちょっと切ない感じになってやはり合いません。
Avoidだからと言って後から直すことはないと思います。むしろ「紅蓮の弓矢アボイド」とか「Revoid」(作曲者がRevoさんなので)とでも名付けてそういう技にしてしまうのが良いと思います。
というわけでRevoid(語感がいいのでこっちにします)がなぜAvoidにも関わらず違和感がなくむしろかっこいいのか考えてみることにします。
以前LiSA「炎」の耳コピを拝聴したことがあったのですが、そこではコードがVIIm(♭5)であるにも関わらずエレキギターがVIIm(のパワーコード)を弾いていました。これをやるとコードトーンの半音上をギターが引く形になり、しかもギター自身もコードを弾いているので音のぶつかりが大変なことになりそうです。しかし実際には特に違和感がありませんでした。というのも歪ませたエレキギターはそもそも単音を弾いたとしてもその歪みによって第2倍音(完全5度上。ドに対するソの位置)が強調されてしまうので、単音を弾いた場合とパワーコードを弾いた場合との差異が歪んでいない場合より小さく、場合によっては違和感なく聴けてしまうようでした。
「紅蓮の弓矢」も歪んだギターがコード楽器の主体であり、鳴らされたC♯5が単音C♯のように聞こえたのかもしれません。そしてコードがC♯mとA/C♯が混ざり合ったようになり、Revoidが違和感なく聞こえたのかもしれません。
そこで、AvoidのA音を紅蓮の弓矢とできるだけ近い形で入れたメロディを、ピアノ・歪んだ音色の2種で聴き比べてみましょう(下のSoundCloud参照)。
両方とも響きが悪い印象ですが、どちらかと言えば歪んだ音の方が違和感は小さくなったように感じられました。しかし、紅蓮の弓矢のようにむしろそのままにしておいた方がカッコいいというサウンドには至りませんでした。作りながら、変更Aを施した方が自然で良いメロディになると思ってしまいました。
2回し目に、AvoidのA音で2つ次の音にDelayed Resolve(解決の一種。2歩進んで1歩戻るような解決の仕方)する……ように見せかけてしないものを入れてみました。こちらは歪んだ音色の方が聴こえ映えが良かったと思います。
結局Revoidがなぜかっこいいのか説明し切るには至りませんでしたが、何かの参考になれば幸いです。
感想ばかりで何も確実なことがなく、何も明らかになりませんでした。申し訳ありません。
来年の卒論ではちゃんとしたいです。
Roseliaの「紅蓮の弓矢」に関しては、公式音源を見つけられなかったのでご自分で探すかガルパをプレイするかしてください。
https://bang-dream.bushimo.jp/
Posted on: 2021年12月5日, by : Rinju