技術書(同人)を書く
これはKCS AdventCalendar2022 11日目の記事です。
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こんにちは、他称シニア総代表のfastriverです。今年の春頃から「再実装Flutter」という本を書いており、紙の本を頒布するところまでやったのでここまでの流れを書き連ねていきます。
頒布方式
今回、技術書を書くにあたっては2つの販路を使いました。
- Zenn Book
- 技術書典
Zenn Book
Zenn(zenn.dev)は技術ブログの一つで、記事を書くだけでなく本を公開することもできます。
本の書き方: https://zenn.dev/zenn/books/how-to-create-book
技術書を書く、というとハードルの高い印象がありますが、Zenn BookではMarkdownで書いた技術記事をいくつかまとめるだけで1冊の本ができてしまうようになっているため非常に取り組みやすいです。Web上でももちろん執筆できますし、GitHubと連携させればVSCode+Markdown+Gitという素晴らしい環境で本を書くことができます。
また、Zennの本は有料で販売できるのも特徴です。
本の価格設定は0円〜5,000円まで。1冊まるごと無料で公開することも、一部のチャプターだけを無料公開することもできます。
https://zenn.dev/zenn/books/how-to-create-book/viewer/about
しかも手数料が安いので、2022年時点では売上の85%超が懐に入ってきます(嬉しい!)。電子書籍ストアより圧倒的に安い。
公開方式はHTML(普通の記事と同じ)なので、ソースコードのコピペなどがしやすい、リンクを用意しやすいのも嬉しい点です。また販売後も更新できるので、誤植なども後から直せます。購入者からすると購入後も本の中身が更新されるのは、よいのか悪いのか。後で直せるのでとりあえずえいやっと本を出してしまうのもありです。
Markdownで書けることと、以前からZennで記事を書いていて文法に慣れていることから最初はZenn Bookですべて書きました。
技術書典
技術書典は年1~2回(間隔が謎)開催されている、ITや科学中心の同人即売会です。今回ちょうどよいタイミングで技術書典13が開催されることがわかったので参加することにしました。
技術書典13: https://techbookfest.org/event/tbf13
技術書典はコロナ禍を経て進化し、独自のオンラインマーケットを持つことが特徴です。技術書典13では久しぶりの完全な対面(オフライン)開催でしたが、オンラインのみでも参加可能、という非常に柔軟な形態になっていました。
ハイブリッド開催ということで、技術書典13の頒布方式は5つ存在しました。
- オンライン電子+物理本
- オンライン電子
- オフライン物理本(現地払い)
- オフライン電子+物理本(後払い)
- オフライン電子(後払い)
参加者も運営もかなり混乱していた印象です。サークル側として非常に助かったのは、対面かつ物理本の取引であっても実際に本を渡すのは後日で良い、という後払い方式の存在でした。これにより事前に本を刷る必要がなく、販売に応じた数量だけ刷ればよくなり、在庫リスクがなくなります。
技術書典の手数料は売上の20%+発送手数料ですが、サークル内累計で50,000円までは手数料が無料です。私は超えないかなーと思っていたらいつの間にか超えていたので少し持っていかれました。さらに技術書典13では現地販売分の手数料が無料になるみたいなこともやっていたらしく、手数料がさらに減額されていました。運営が心配… 総じて手数料は現状安いのでこのような即売会に出すのはおすすめです。
紙の本を出す場合
同人誌の金額に一番大きくのしかかってくるのが、印刷代です。小ロットでも印刷可能なオンデマンド印刷という方式があるのですが、部数が少ないとまあ高い。今回対面で参加するにあたって本を持っていかないとさみしいかなと思い10部だけ刷ったのですが、1冊あたり2000円弱の印刷代がかかりました。
対面では1冊1000円で売ったので大赤字です。一方電子書籍については印刷代がかからないため、辛うじて利益が出ます。というわけで収支としては物理本を売るたびに出る赤字を電子書籍の黒字でなんとか埋める感じになりました。今は同人誌を電子書籍のみで販売する下地が整っているため、利益重視の方は物理本を作らないという選択肢もありだと思います。私はロマンをとりました。
…しかし技術書典13では後から印刷(受注生産的なやつ)を利用すると印刷代が80%帰ってくるキャンペーン(?)をやっていたのでなんかお金が返ってきました。ありがとう、技術書典運営様
電子書籍(PDF)と物理本を作って売ろう
お金の話ばっかりになったので本をつくる流れも振り返りましょう。
まず原稿ですが、今回はZenn bookで執筆したMarkdownファイルが存在するのでそこから変換を試みます。
技術書典では技術書の執筆にRe:VIEWという組版ソフトを使うのが一般的です。テンプレートも用意してくれていて非常に親切。
https://github.com/TechBooster/ReVIEW-Template
Re:VIEWにはMarkdownからRe:VIEW形式に変換してくれるpandoc2reviewという機能がついているので、reviewに変換してから微調整を行い、PDFを出力するという流れをとりました。全体としては以下のような流れになります。
技術書典では出品に際して審査が必要だったため、先に電子版を完成させてマーケットに登録しました(2週間前くらい)。物理本を手に入れるためには印刷所に頼んで印刷をしてもらう必要があるので、印刷用のPDFを作ります。PDFにも色々な種類があり、印刷でトラブルを起こさないようにいくつか手順がありました。Acrobat Proが必要ですがこれは大学パワーでどうにかできます。また表紙は別の入稿になるので、それも用意します。他の人に頼む場合は余裕を持って頼みましょう。入稿のタイミングですが、そんなに焦らなくても大丈夫です。最悪お金を積めば翌日納品してくれたりします。安く済ませたい場合は2週間くらい前に入稿すると割引価格でやってくれるみたいです。
さて、入稿が無事完了したらあとは当日です。オンラインマーケットは数字を見て楽しむだけなので、主に対面参加のお話を。
サークル参加で必要なものはいくつかありますが、特に重要だったものを挙げてみます。
- 手伝ってくれる人: 心と体の安心
- 見本誌: 手に取れるのが対面では重要
- 机にかける布: 清潔感が出る
- ポスター
- 値札
見本誌やポスターは、コンビニで印刷しても最近はきれいに出せるので、いくつか用意しておくとよいです。布は半透明のを使ったら微妙でした。
技術書典では、提携印刷所にお願いすると会場に直接納品してくれるので、自宅から重い本を運搬する手間がなく非常に楽ちんでした。
開始前は刷ってきた本が売れるかどうかどきどきしていたのですが、結果としては午後一くらいには在庫を捌ききることができました。即売会に来場する人は基本的に金銭感覚が狂っている意欲的な人が多いので、勝率が高めです。
技術書典に参加することで多くの人の目に触れてもらう機会を作れたので、非常に良い体験になったと思います。
まとめ
儲からないけど同人技術書を書こう!
商業書はもっと儲からないかもしれない